
小中学校の美術の時間を思い出してください。
「思うがままに、感覚で描きなさい」と言われませんでしたか?
そして、感覚で描いてみたものに優劣がつけられる…。
絵を上手く描けるようになるには、感性を磨くしかない。
そう思い込まされたのではないでしょうか。
実は、デッサンが上手くなるコツの半分は、数学的なものごとの見方や論理力なのです。
そして、もう半分が自身の感性の力を引き出すことです。
デッサンの半分が数学的なものの見方というのは、意外なことに聞こえるかもしれません。
しかし、ここに紛れもない事実があります。
それは、我が国唯一の国立の芸術大学である東京藝術大学の現役合格者の多くが、中高で数学が得意だったというものです。
これはつまり、絵を描くことには、感性や感覚をつかさどる右脳と、論理をつかさどる左脳を統合した、調和のとれた戦力が必要とされることを意味しています。
小中学校の美術教育を批判するつもりはありませんが、思うがままに描くというのでは、右脳と左脳が調和しない書き方になってしまうのです。
そのように考えると、ここ最近、MBA(Master of Business Administration/経営学修士)以上にMFA(Master of Fine Arts/美術学修士)ホルダーが注目されつつある、ということにも納得がいきます。
かつて、ビジネスの世界では、MBAを持つことがステータスとなり、一つの勲章とされていました。
しかしながら今、アメリカではMBAよりも、MFAを持っている人材のほうが重宝されています。
給料も待遇も、MBAを持っているより、MFAを持っている人のほうが圧倒的に高くなる時代になっているのです。
不景気になってもモノだけはあふれ続ける世の中で、魅力的な商品を生み出せるか、商品を買いたくさせられるかには、デザイン性、アート性が鍵となります。
そのため、それらを大学院で徹底的に研究してきたMFAを持っている人々は、右脳と左脳を統合してバランスよくものごとを考えることが可能であり、売り上げに直結するスキルを持っているということで高く評価されているのです。
MFAは、当然、MBA取得者より人数が断然少なく、その希少価値も評価されていることの一因です。
複雑で変化がとても激しく、不確実性が高い今日のビジネス環境において、従来の知識や論理的思考・分析のみに頼った発想や思考では限界があります。
ビジネスにおいても、全体を直観的に捉える感性や、課題を独自の視点で発見し、創造的に解決する力の重要性が日増しに高まってきています。
今まで我々は、主に左脳がつかさどるロジカルシンキングを鍛えてきました。
論理が持つ力ももちろん重要ですが、これからの21世紀をしなやかに生き抜いていくためには、アートが持つ感性の力も同じぐらいに重要なはずです。
『ビジネスの限界はアートで超えろ!』ディスカヴァー
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