
欲心によって為された行いの多くは、短期的に収入を増加させることはあっても、長期的には期待していた逆の状況を招くのです。
梅岩という人は、行為自体より、心の状態を改めることを重視しています。
そのような彼が、最も理想的と考える心の状態が、「正直」と呼ばれるものです。
――― 自分に他人の誠実と不誠実がわかるように、他人からもまた、自分の誠実と不誠実はわかることを知らない者が多い。
『大学』に書かれているように「他人は自分の心の奥底まで見抜く」のである。
この真理を知れば、言葉を飾らずありのままにいうので、正直者と思われ、また、何事でも任され頼られて、苦労することもなく人一倍、物を売ることができるのだ。
正直だと思われ、打ち解けることは、自分にも相手にも善であると知らなくてはならない。――― 『都鄙問答』
自分から他人の誠実さや不誠実さがよくわかるのと同じく、他人からは自分の誠実さや不誠実さがよくみえているものです。
だから、自分が正直であれば、必ず周りの人々はそれを理解してくれるはずなのです。
それに対して、表面をどんなに繕っても、心が正直でなければ、それもやはり周りに伝わることだろう、そう梅岩はいうのです。
そして、結果として、正直である者は、商売も繁盛するだろうと述べています。
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なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?
森田 健司 著
ディスカヴァー
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