
河瀬流人たらし道のキーワードの一つに、「さわやか」があります。
「さわやか」とは何かといえば、いま、喉元に出かかっている、いいたいことをいわないということです。
会社での日常にたとえてみましょう。
お客さまに土産物を持っていって、帰り際に
「これ実は、ちょっと高かったんですが、いつもお世話になっている、部長にならと思いまして…」
と、次の営業物件を頭に描きながら、ついついダメを押すつもりでいう。
「そんな野暮なことはいわなくても…」です。
相手は、そこでゲンナリとなります。
さわやかは、相手に返報を求めないことです。
さわやかは、相手につけまわさないことです。
さわやかは、手切れをよくすることです。
さわやかは、言い訳を考えないことです。
さわやかは、リスクを自分がおおうとする姿勢です。
人の自己重要感を上げてあげると、相手から感謝されます。
でも、人の自己重要感を上げてあげたことは、その場で忘れることです。
こちらからは、そのことを二度と口に出さないことです。
見かえりは、求めないことです。
そこに、さわやかさが生まれます。
でも、実は、見かえりがあるのです。
私の長年の体験から、そういう“さわやか”な姿勢でいると、自己重要感を上げた相手から、直接見かえりがなくとも、思いもしないところから、めぐりめぐって、間接的な見かえりがあるのです。
自分の意志では、コントロールできない、不思議な意思が働くのです。
他力の力が、働くのです。
見かえりは、直接相手から求めない。
そのことは、気前よく、さっぱりと忘れ、後は他力にゆだねてしまう。
これが、河瀬流人たらし道です。
『人たらし道 免許皆伝』
河瀬和幸 著
こう書房
![]() |