
毎朝宗久さんが廊下の拭き掃除をしていると、庭先から「おはようございます」と、にこやかな笑顔で挨拶をされる作務衣姿の方がおられました。
宗久さんは、当初はこの方が何者なのかわからず、ただ、毎朝爽やかな笑顔で挨拶されるので、とても感じのいい人だとは思っていたそうです。
後でわかったのですが、この方が天竜寺の貫長(最高位の方)でした。
この貫長さんは、毎朝決まった時間に天竜寺近くを散歩されていたそうです。
そのときに毎日出会う人がいました。
その人に対して、貫長さんは毎日同じように「おはようございます」と挨拶をして会釈をなさいました。
しかし、声をかけられた人は、無視をして一切返事をすることがなかったといいます。
しかし貫長さんは、相手の笑顔や挨拶が返って来ようが来るまいが関係なく、毎朝笑顔で「おはようございます」と言い続けたのだそうです。
三年経ったある日のこと、いつものように「おはようございます」と笑顔で挨拶した貫長さんに対して、その人はついに「おはようございます」と声を発しました。
そして、言い終わった後に、「ごめんなさいっ」と、がばっとひれ伏したというのです。
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すべてを味方 すべてが味方
小林正観 著
三笠書房より
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