
若いころはせっかちだった人も、年をとるにつれて、自然にゆっくり力が身について、ゆうゆうと生きてゆけるようになる、と単純に考えるかもしれないが、それは大きな間違いである。
ほうっておけば、せっかちな人は年をとるにつれて拍車がかかり、ますますせっかちになっていくものである。
がんこな人には、同じことが起こる。
年をとるにつれて、がんこに拍車がかかっていき、「あんな、がんこなじいさんはいない」といわれるようになる。
いじわるな人も度をこして、「あんな、いじわるばあさんは見たことない」となってくる。
人の性格は、年をとるにつれて、もともとの性格が強く出てきて、極端になっていくものなのである。
加齢により血管が硬くなるように、アタマも硬直化して、思考に柔軟性がなくなるのであろう。
「一怒一老」というが、「怒り」は老化を加速させる。
ひとつ怒れば、それだけ、せっかち老人、がんこじいさん、いじわるばあさんにいたる道も早くきてしまうのだから気をつけたい。
そこでアタマの硬直化を予防する柔軟体操のひとつは、「楽しいこと」への好奇心を旺盛にしておくことである。
子供のころの明日は遠足だという前の日の「わくわくする気持ち」を、今でも覚えているだろうか。
その気持ちを、年をとっても失わないことが大切である。
わくわくが心を揉みほぐす。
心のいい運動となって、脳の硬直化を防ぐ。
楽しそうなことは、なんでもやってやろう、見てやろう、の心意気だ。
もっと「もの好き」になりなさい。
私の、わくわくするような楽しみは、旅をする楽しみ、飛行機、列車、船に乗る楽しみ、お酒をたしなむ楽しみ、むかしからの友人とほろ酔い気分で冗談をいい合って、大いに笑い合う楽しみなど、いくつもある。
楽しみをたくさんもっていたことが、心に余裕をつくりだしてくれたのではなかったかとも思う。
「一怒一老」よさようなら、「一笑一若」こんにちは、だ。
『「ゆっくり力」でいい人生をおくる』新講社ワイド新書
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