堀紘一「話し上手の技術」

banner02
鏡 いいため話
画像:http://gahag.net/

ありがたいことに「堀さんは話し上手ですね」と褒められることがよくある。

私はニコニコしながらも、「だって私はあなたより人の話をよく聞きますからね」と内心では思っている。

往々にして褒めてくれる人は、自分の話し方、伝え方にコンプレックスを抱いている。

そして私の経験では、伝え方が苦手でコンプレックスを持っているタイプほど、人の話をよく聞かない傾向が多い。

そして、その事実に本人は気づいていない。

一時期、よくテレビに出演していた影響だろう。

私はよくしゃべる男だと思われているようだ。

ところが、私が常時心がけているのは、話すことの前に、よく人の話を聞くことである。

話し上手が聞き上手なのは言(げん)を俟(ま)たない。

話すときは、相手が何に関心を持っているのか、あるいは何を知りたがっているのかを踏まえなくてはならない。

だが興味、関心は、その人の顔や笑いを眺めるだけでは推し量れない。

興味と感心のありかを探るには、相手の話をひたすら聞く他ないのである。

医師は問診をして熱を計り、脈をとらないと、患者の顔色を見ただけでは処方箋を書けない。

それと同じことだ。

相手にしゃべらせれば、しゃべらせるほど、相手の興味と感心の範囲と深さがどのレベルかがわかってくる。

コンサルティングでもクライアントの話をじっくり聞いてから、どこで勘違いや誤解をしているか、トラブルの源はどこかを探り出す。

話しが上手か下手かをテクニックの差として捉えるのは、偏った見方である。

物事はそんなに単純ではない。

小手先の話術を駆使したとしても、あるレベル以上には向上しない。

伝え方の良し悪しを決定的に左右するのは、話し手の教養の深さである。

話し上手になるには結局、教養の蓄積が求められる。

その教養を得るのが学び。

学びにおいて、私はことあるごとに読書の重要性を強調している。

それに加えて人の話を聞くことも、教養を養う得難いインプットとなる。

『心を動かす話し方』SB新書