極めることを不可能にする心理

怒り いいため話
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どんな滑稽な役者であっても、もしその演技によいところを見つけたら、上手な人でもそれを真似るべきです。

これは道を極めるための、第一の方法でしょう。

世の中には、もしよいところを見つけても、自分より下手な人間であれば、その技術を取り入れてはいけないように考える常識があります。

ただ、そうした狭い心に縛られているのでは、どうあっても自分の欠点を知ることはできなくなります。

これは能において、「極めることを不可能にする心理」です。

また下手な役者も、もし上手な役者の悪いところに気づけば、「上手な人にも欠点があるのだな。だとすると、初心者の自分であれば、さぞや欠点は多いのだろうな」と考え、そのことに恐怖を抱き、他人に自分の芸のことを尋ね、芸に工夫を凝らすようになっていくでしょう。

稽古にもいよいよ励むようになり、他の技術はすぐに上達していきます。

これをやらず、「上手い役者かもしれないが、オレはあんなふうにおかしな演技はしないぞ」と、自分のことを棚に上げて慢心するばかり。

自分のよいところすら本当にわかっていない役者とは、だいたいこのようなものなのです。

自分のよいところを知らないと、悪いところも「よい」と思ってしまいます。

この状態だと、どんなに年数を経ても、能の腕は上がりません。

下手な人の心のうちとは、こういうものでしょう。

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風姿花伝

世阿弥 著

夏川 賀央 訳

致知出版社より