
じつのところ、神童と呼ばれた人が大人になって世界を変えることはまれだ。
心理学者の研究によると、歴史上もっとも優れ、多大な影響をおよぼしている人たちは、子ども時代にはさして才能に恵まれていたわけではない。
天才児を大勢集めてその一生を追跡してみたとしたら、同等の家庭環境に育つふつうの子どもたちよりも、とくに優れているわけではない。
これは直感的に理解できることだ。
才能に恵まれた子どもたちは、学問的な知識は優れているけれども、社会でうまく生きていくための知識に欠けていると、みな思うだろう。
知的な能力があっても、社会的、感情的、実践的なスキルに欠けているのでは?
だが研究の結果を見てみると、この説明だけでは不十分なのだ―――才能に恵まれた子どもたちのうち、社会的問題や感情的問題に苦しんでいるのは、四分の一に満たないのである。
大部分はうまく社会に適応しており、社交の場であるパーティーでも国語検定大会と同じように楽しく過ごしている。
ではなぜ、天才児は才能にも野心にもあふれているのに、世界を進歩させるようなことを成し遂げられないのかというと、「オリジナルであること」、つまり独自のことや独創的なことを率先して行う術を学んでいないからだ。
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ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
アダム・グラント 著
シェリル・サンドバーグ 解説
楠木 建 監訳
三笠書房より
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