
「四知(しち)」という言葉を知っていますでしょうか?
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中国の昔の話でありますが、後漢時代に楊震(ようしん)という人がありました。
たいへん位の高い人であります。
この人が、あるところへ赴任する時に、すこし調子のいい部下が挨拶に来て、お金を贈るのであります。
「どうぞひとつこれをお取りください」と。
あまり感心できない男らしいのでありますが、その男は「もう夜ですから誰も知っている者はありません」とこう言ったわけであります。
そうすると、この楊震という人は、
「いや、知っている人は少なくとも四人おる。 天知る、地知る、子(し)知る、我知る」。
天が知る、地が知る、「子」は「あなた」です。
あなたが知る、私が知る。
だから知らないなんていうのはとんでもない話だと言って、その持ってきた人を戒めるのであります。
「天知る、地知る、子知る、我知る」・・・・・
言われてみれば、誠にもっともなことであります。
知らぬ人はいない。
知っている人は必ずあるわけであります。
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平澤 興 講話選集「生きる力 古典に学ぶ」
平澤 興 著
致知出版社より
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