
昔から武士たちは戦に出る前にお茶を一服いただきました。
もうこれで死ぬかもしれん、あるいはまた生きて戻ってこられるかもしれん。
そう思い、お茶をしっかりと喫したものです。
死を覚悟する、そのときに茶の湯が使われました。
死んでもいい、生き残ってもいい。
それを天にまかせる。
死とはこういうものであると受け入れた瞬間に、人は恐れるものがなくなります。
恐れるものが何もない状態ですから、これほど強いものはございません。
そしてひとたび戦場に出れば誰よりも強さを発揮します。
けれども、戦が終わればすっと慈悲の世界に入る。
これが本当の強さです。
強さというのは力の強さでも、単なる気の強さでもありません。
禅の中で正常な鍛え方をした先に真の強さがあります。
現代人にはこの強さが必要であると、私には思えるのです。
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「耆に学ぶ」
清水克衛 執行草舟 吉田晋彩 西田文郎 寺田一清 (著)
エイチエスより
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