
《春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり》(道元)
「人生は春夏秋冬を経て、やがて終わりを迎える」
一見、仏教とはなんの関係もないように思えるこの句が、仏の教えを見事に表している。
春の訪れを知らせてくれる花。
夏にしか聞こえないホトトギスの声。
秋を感じさせてくれる名月。
そして身を切るほど寒い冬に降る真っ白な雪。
冬が過ぎて、再び春の花が咲く…。
春、夏、秋、冬にはそれぞれかけがえのない美しさがある。
その時、その時の美しさを手で掴むことはできない。
そして春の花は、やがて散る。
だからこそ、いまここに咲いている花の命が尊く感じられるのだろう。
春夏秋冬の移り変わりは、そのまま人間の真実を語っている。
この世に生まれ、成長し、大きな働きをする人間。
恋もすれば、酔いもする人間。
やがて力衰えていく人間。
死に向かっていく人間。
いまここに生きている私も、あなたも、いずれは死ぬ運命にあるが、死ねば新たな命も芽吹くであろう。
お釈迦さまが説いた「生老病死」も、人生の春夏秋冬としてそのまま受け入れてはいかがだろうか。
「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ)
引用:ドイツ人禅僧の心に響く仏教の金言100
ネルケ無方 著
宝島社
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