
やはり人間は学問である。
学問もこのごろのような知識・技術はだめですが、本当の道の学問、徳の学問というものをやらなければいかん。
偉くなればなるほどやらなければならん。
名士になるほどやらなければならん。
ところが心掛けが悪いと、名士になるに従って忙しくなる。
学問なんかしている暇がないと言う。
それがもうすでに間違いである。
名士になるに従って、「名」の字は「迷」という迷士になるからいろいろ失敗をやる。
やはり人間はできるだけ無名であらねばなりません。
無名にして有力になるのが本筋です。
無名有力になるのが人間成功の秘訣であります。
たいていの人間は有名になろうと求めて、次第に「有迷」になる。
名士が迷える「迷士」になってしまう。
いろいろの弊害はここから起こってくる。
こういうことを明らかにするのが、徳の学問であり、道の学問である。
その点において、古人の残してくれた学問というのは非常に尊いものだ。
ありがたいものであります。
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酔古堂剣掃(すいこどうけんすい)を読む
安岡正篤 著
致知出版社
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