「家康を天下人へと押し上げたい」という部下

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家康 いいため話
画像:東洋経済オンライン

元忠は、いつの頃からか、この働き甲斐のある主君(家康)を天下人へと押し上げたいと願うようになっていた。

(人格、風格備わるこのお方ならそれができる)

元忠は、家康なら天下泰平の世を作れると確信していた。

そのためにいつでも命を捨てることを覚悟していた。

そんなある日、元忠は家康から数々の武功に対して感状を送られた。

普通の武将なら涙を流して喜んだことだろう。

だが、元忠はそうではなかった。

感状を前にうかない顔をしている元忠に家康は、

「元忠、どうしたのだ。何か気に入らないのか」

「気に入りませぬ」

さしもの家康も感状を気に入らないという元忠に眉を寄せた。

「殿、情けのうございまする。このようなものは他家に仕える時に役立つものでござる。

私は殿にだけお仕えする所存。殿のために武功を挙げるのは当然のこと」

そこには元忠の「私」など入る隙はない。

それをなぜ分かって下されぬ。

その元忠のまっすぐな忠義の心はそのまま家康の心を突き刺したようだった。

「すまぬ。元忠」

この時、主従の心はひとつとなった。

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泣ける!日本史

後藤 寿一 監修

主婦と生活社