
ある人がこんな話をしてくれました。
その人は、久しぶりに自分の友人を山の中に訪ねて行ったそうです。
積もる話に花が咲いて、いつしか日が暮れ、外は山の天候が変わって嵐になりました。
久しぶりに訪ねて行った自分なのだから、一晩ぐらいは泊めてくれるだろう、そう思っていても一向にその気配がありません。
そこで、「遅くなったから、そろそろ帰ろうか」と言ったところが、友人は引き止めもせず、「山の麓まで送ってやろう」とも言わなかったそうです。
玄関の格子戸を開けると、外は真っ暗。
「暗いなあ」と言うと、友人は「暗いから気をつけて帰れよ」とだけ言って、懐中電灯さえ貸してくれません。
その人は真っ暗闇の中を、木の根につまずいたり、こけつまろびつ、山裾まで下りて行きました。
すると、そこでは雨もやみ、風も凪ぎ、月の光さえ射していたそうです。
そしてその時に、依頼心とか甘えをいっさい切り捨てた時に生まれる自分の力に気づき、何とも言えない清々しい気持ちを味わったと話してくれました。
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「幸せはあなたの心が決める」
渡辺和子 著
PHPより
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