
【哲人】「わたし」や「あなた」よりも上位のものとして、「わたしたち」を揚げる。
人生のすべての選択について、その順序を貫く。
「わたし」の幸せを優先させず、「あなた」の幸せだけに満足しない。
「わたしたち」のふたりが幸せでなければ意味がない。
「ふたりで成し遂げる課題」とは、そういうことです。
【青年】利己的でありながら、利他的でもある・・・と?
【哲人】いいえ。利己的では「ない」のだし、利他的でも「ない」のです。
愛は、利己と利他の両方を兼ね備えるのではなく、どちらも退けるのです。
【青年】なぜです?
【哲人】・・・「人生の主語」が変わるからです。
【青年】人生の主語!?
【哲人】われわれは生まれてからずっと、「わたし」の目で世界を眺め、「わたし」の耳で音を聞き、「わたし」の幸せを求めて人生を歩みます。
これはすべての人がそうです。
しかし、ほんとうの愛を知ったとき、「わたし」だった人生の主語は、「わたしたち」に変わります。
利己心でもなければ利他心でもない、まったくあたらしい指針の下に生きることになるのです。
【青年】でもそれは、「わたし」が消えてなくなるということにもなりかねませんよ?
【哲人】まさに。
幸福なる生を手に入れるために、「わたし」は消えてなくなるべきなのです。
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「幸せになる勇気」
岸見一郎 著
古賀史健 著
ダイヤモンド社より
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