
舩井先生の言葉に、能力という言葉はあまり出てきません。
性格または、クセづけという言葉のなかに成功の道筋を多く語ってきたのです。
「人間の能力なんてのは、ほとんど差なんてないよ。性格で差がつくんだよ」
仕事の進捗の遅さを先生に弁明したとき、何度か言われました。
「大事なことは成功するクセづけだ」ともよく言われます。
入社式の日、新入社員は私を含めた5人。
その5人に、まず最初に身につけるクセを舩井先生は語りはじめました。
「相手のことを一所懸命、親身になって考えなさい。そのためには、3つのクセをまずつけることだ」
メモをとる、必ず見送る、手紙を書く。
「どうだ、簡単なことでしょう。まずこの3点を徹底してごらん」
人間の性格のなかで、好かれる性格づくりから始めよと、先生は言うのです。
“いまのあなたは、あなたのなりたかった自分だよ”
舩井先生が口にするこの言葉は、人間の本質の一部を表しています。
自分が自分をどう評価するかは関係のないことで、人間は他人からどう見られているか、その見られ方が性格なのです。
どんなに、「私は明るい人間だ!」と主張しても、「えっ、あなたは暗いわよ!」と言われれば、その人は暗いことになります。
どう見られているか?その一点を人間は自分で考え、理想の自分を演じていくのです。
どんな自分でありたいのか?
人間は、自己のことをそう考えることができる唯一の動物です。
であれば、理想の自分をイメージしてそのイメージを実践する。
そのことでイメージに近づき、理想の自分を周りから感じてもらえます。
誰だって嫌われたい、暗い、後ろ向きだ、愚痴っぽいと思われたくはないでしょう。
ならば、好かれたい、明るく前向きで感じのいいあなたをイメージして演じるのです。
演じると言うと、首をかしげる方もいます。
では、律すると言い換えてもよいのです。
メモをとる。
誰かの話を聞いているとき、私はとことん真剣に聞いている、あなたの言葉に集中していますよ!
それがメモをとる姿です。
「全身全霊を込めてメモをとっている人間を見て、嫌だなと思う人間はいないだろ」
確かにそのとおりです。
見送る。
その人間の本性は見送りの姿勢に出るものです。
古くからあるサービス業の言葉に“迎え三歩に送り七歩”というものがあります。
確かに、さまざまな企業を訪問して帰ろうとするとき、エレベーターホールまで見送りに出る人間、エレベーターで下までともに下りて見送る人間、ビルの外まで見送る人間…さまざまです。
「見送りが丁寧な人ほど、必ず成長するものだよ」
3000人以上の経営者、何万人の経営幹部とコンサルティング現場で接してきましたが、このルールは間違いないようです。
「どんな人にも、気分よく帰ってもらうんだ。それが好かれるコツだよ」
手紙を書く。
思いを馳せる、という言葉があります。
手紙を書くことは、まさにいま書いている相手の顔を思い浮かべ、その相手に思いを馳せることです。
「心を込める。相手のことを親身に考えるクセづけになるのだよ」
一日3通は書きなさい。
書いているうちに、苦痛でもなくなるからと言われました。
年に1000通。
このクセづけは、このときから守っていることの一つです。
成功する人間には、成功する性格がある。
『舩井幸雄の60の言葉』マガジンハウス
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