
誰かの想いや言葉や行動が行き交う社会と、日々関わる私たち。
それは、この世界が均衡しながら揺れ続けるのと一緒であり、人間もそれぞれの世界の中で、いろいろな感情が、毎日心の中を廻り続ける。
生きていれば、なにもない穏やかな時間も、良いときも、嫌なときも、必ずやってくる。
ある日のネガティブな感情があれば、ある日のポジティブな感情もあるように、人間は生きている限り、ひとつの感情に収束されない生きもの。
それなのに。
得てして、人はこう思いたがる。
(善き一貫性さえ持ち合わせていれば、安心もでき、バランスだって取れていくはず)
本当にそうだろうか・・・。
喜怒哀楽。
どんな感情も、元々ひとつの自分に備わっている感情の一片。
善き人生を目指し、善き心を掲げていたとしても・・・、ときに、一筋縄ではいかないのが人生という道でもある。
自身も、あの人の心も、家族も、組織も。
どんな世界であれ、ひとつの塊りに括ろうとすると、細胞分裂を繰り返すかのように、その塊は弾け出す。
縛ろう、奪おう、と思わずとも・・・、蠢き出してしまう。
それは両極の不変の摂理だ。
人の善き心、も然り。
その一片だけを照らし続ければ、それは脱ぎ捨てることもできないほどの、心を覆う闇で、いつの日か、強固な鎧にさえなってしまいかねない。
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私は、悲しみも劣情も、静やかに眺める。
黒田 充代 著
クローバー出版
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