
今の日本では、目に見える数値や目先の利益ばかりがもてはやされ、本当に大切なものが見過ごされているのではないかと思うことがあります。
最近の駅や空港では、一歩でも近道をしようと思うのか、人を押し分け、平気でぶつかっていく人が多くなりました。
自分の体や荷物が人に触れないようにする、たったの二、三歩を惜しむことが、果たして得になるのでしょうか。
目に見えないマイナスに気づかない人が増えているのは、恐ろしいことです。
青森県弘前で、完全無農薬・無肥料の「奇跡のリンゴ」の栽培に成功された、木村秋則さんという方がいらっしゃいます。
木村さんのリンゴ畑を尋ねた時、「どうぞ木から取って、洗わずにそのまま食べてください」と勧められ、口にしたリンゴの味は忘れられません。
畑の土を手に取ってみると、本当に山の中と同じ匂いがしました。
長い年月をかけながら落ち葉が積み上がってできる、腐葉土のような匂いです。
木村さんは目に見える木の上の枝や葉よりも、木の下にあって見えない土をよくして根を育てることに着目し、成功されたのです。
(中略)
経済のように目に見えるものも、確かに大切です。
しかし、経済さえ強ければ国はよくなるかと言えば、そんなことはありません。
目に見えない国民性が低ければ、いくら経済が強くても国は衰退することを、歴史が証明しています。
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凛とした日本人の生き方
鍵山秀三郎 著
モラロジー研究所
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