
日本の父母は、つい最近まで三つのことを教えた。
・お天道様が見ている。
・ご先祖様に恥ずかしいことをするな。
・故郷に錦を飾りなさい。
お天道様も、ご先祖様、故郷も、もちろん見ているはずもない。
難しい言葉で言えば、形而上的存在である。
誰が見ていなくとも、正しく行動する。
その大切さを父母は子供たちに伝えた。
そして正しく信頼を積む行動をしていれば、お天道様、先祖、そして故郷が応援してくれる、との意味もあったに違いない。
日本人は、日頃の振る舞いが天気すら左右すると考えた。
いや今でも、心の奥底にそんな思いを抱いているのではないだろうか?
「みなさんの日頃の行いが良いのでしょう。お天気になりましたね!」
小学校の遠足の時、そんな言葉をバスガイドから言われた記憶がある。
「お前の日頃の行いが悪いから、せっかくのゴルフなのに雨だぜ」気象と日頃の行いの間には、何の因果関係も科学的にはないことが分かっているにもかかわらず、そんな軽口を叩くこともあるだろう。
しかし、私たちは、日常の立居振る舞いが小さな幸運をもたらすと、どこかで確信めいた何かを持っているのではないだろうか。
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なぜ世界は日本化するのか
佐藤 芳直 著
育鵬社
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