マザー・テレサ「愛と祈りのことば」

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愛 いいため話
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ある夜のこと、一人の男性が訪ねてきて、「八人の子持ちのヒンズー教徒の家族が、このところ何も食べていません。食べるものがないのです」と告げてくれました。

そこで私は、一食に十分なお米を持ってその家に行きました。

そこには、目だけが飛び出している子どもたちの飢えた顔があり、その顔がすべてを物語っていました。

母親は私からお米を受け取ると、それを半分に分けて、家から出て行きました。

しばらくして戻ってきたので、「どこへ行っていたのですか、何をしてきたのですか」と尋ねました。

「彼らもお腹を空かしているのです」という答えが返ってきました。

「彼ら」というのは、隣に住んでいるイスラム教徒の家族のことで、そこにも同じく八人の子どもがおり、やはり食べるものがなかったのでした。

この母親はそのことを知っていて、僅かの米の一部を他人と分け合う愛と勇気を発揮したのでした。

自分の家族が置かれている状況にもかかわらず、私が持って行った僅かの米を隣人と分け合うことの喜びを感じていたのです。

その喜びをこわしたくなかったので、私はその夜、それ以上の米を持っていくことはせず、その翌日、もう少し届けておきました。

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マザー・テレサ 愛と祈りのことば

渡辺 和子 訳

PHP文庫より