
井村和清さんが書いた「ふたりの子どもたちへ」という手紙をご紹介させていただきます。
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心の優しい、思いやりのある子に育ちますように。
悲しいことに、私をお前たちが大きくなるまで待っていられない。
こんな小さなおまえたちを残していかねばならぬのかと思うと胸が砕けそうだ。
いいかい。心の優しい、思いやりのある子に育ちなさい。
そして、お母さんを大切にしてあげなさい。
父親がいなくても、胸を張って生きなさい。
私も右足切断の手術を受けたけれども、負けなかった。
だからおまえたちも、これからどんな困難に逢うかもかもしれないが、負けないで、耐えぬきなさい。
サン・テグジュペリが書いている。
大切なものは、いつだって、目には見えない。
人はとかく、目に見えるものだけで判断しようとするけれど、目に見えているものは、いずれは消えてなくなる。
私に逢いたくなる日がきたら、手を合わせなさい。
そして、心で私を見つめてごらん。
お母さんを守ってあげなさい。
思いやりのある子とは、周りの人が悲しんでいれば共に悲しみ、よろこんでいる人がいれば、その人のために一緒によろこべる人のことだ。
思いやりのある子は、まわりの人を幸せにする。
周りの人を幸せにする人は、まわりの人々によって、もっともっと幸せにされる、世界で一番幸せな人だ。
だから、心の優しい、思いやりのある子に育ってほしい。
それが私の祈りだ。 さようなら。
わたしはもう、いくらもおまえたちの傍にいてやれない。
おまえたちが倒れても、手を貸してやることもできない。
だから、倒れても 倒れても自分の力で起きあがりなさい。
さようなら。
おまえたちがいつまでも、いつまでも幸せでありますように。
雪の降る夜に 父より
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引用:飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ
井村和清 著
祥伝社
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