
人の評判がこわくなりだす時がある。
それは、ありのままの自分で生きようとして第一歩を踏み出した時である。
第一歩を踏み出そうとする時はまだ他人の評判はこわい。
しかし、第一歩を踏み出してしまった時には、不思議なくらいこわくなくなりはじめる。
あとは春の陽に雪が消えていくように、他人の評判に対する恐怖心は消えていく。
朝から一日がかりでラーメンのスープをつくる男性がいる。
料理が好きなのである。
台所には自分用のエプロンがおいてある。
編み物の好きな男性もいる。
自分でセーターを編んでは親しい人にプレゼントしている。
これらは、他人からよい評判を得るためにやるのではない。
まさに自分のためにやるのである。
自分のための生活を大切にし、あるがままの自分として生きることは、その人に心理的な安定をもたらすにちがいない。
そして、このような生活はまた多くの親しい友人をつくるにちがいない。
なぜならこのような生活には恐れの入る余地がない。
恐れのない人は利己主義者ではない。
利己主義者でない人には友人ができる。
われわれの利己主義は恐れによって発動される。
自分の評判が悪くなることを恐れて生活している人をよく観察してみればわかる。
たいてい利己主義者である。
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心を安定させる言葉
加藤諦三 著
PHP研究所
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