
その昔、わたしがまだ幼い少女だったころ、おばのメルディに聞かれたことに、息が止まり、身のすくむ思いをした。
「マルタおばさんとわたしと、どっちのほうが好き?」
大人たちがおしゃべりをやめたせいで、いきなり時が止まったようにすーっと緊張感が広がったのをおぼえている。
こんな重大な質問に、この子はなんと答えるだろう。
大人たちはみんな好奇の目でわたしを見ていた。
いつものわたしなら、竜巻のように洗面所に走っていってドライヤーのスイッチを入れたり、台所に戻って冷蔵庫を開けたり、
また洗面所に引き返して髪にカーラーを巻いたり、とにかく動き回っているのに、そのときばかりはスピードを落として深呼吸しなければならなかった。
一瞬黙って、どう答えようか迷った。
6歳でも微妙な質問だとわかったからだ。
この質問にはメルディおばさんの私情が絡んでいる。
それでも、わたしはほんとうのことを言った。
「マルタおばさん」
マルタはいつでもわたしを愛してくれていた。
わたしが自分を傷つけるようなことをしようとするとやめさせてくれた。
わたしを守ろうとしてくれた。
大人たちは黙ったまま、まだわたしを見ていた。
わたしはこう付け加えた。
「だって、時々『ノー』って言ってくれるから」
引用:人生がうまくいく人の断る力
ジェームズ・アルカッター / クローディア・アズーラ・アルカッター 著
石田久二 訳
アチーブメント出版
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