
長い人生を生きてきたが、星の命に比べたら、百歳まで生きたって、瞬間に消え去っていくのと変わらない。
人間は、宇宙的にいえば、ごく短い間しか生きはしないのだ。
つかの間の人生なら、なるべく楽しく暮らしたほうがいい。
それでは、人は何が一番楽しいんだろう。
何が一番うれしいんだろう。
その答えが「よろこばせごっこ」だった。
母親が一生懸命に料理をつくるのは、「おいしい」とよろこんで食べる家族の顔を見るのがうれしいからだ。
父親が汗をかいて仕事をするのは、家族のよろこびを支えるためだ。
美しく生まれた人は、その美しさで人をよろこばせることができる。
学問が得意な人は学問で、絵を描ける人は絵を描くことで。歌える人は歌で。
人は、人がよろこんで笑う声を聞くのが一番うれしい。
だから、人がよろこび、笑い声を立ててくれる漫画を長く描いてきた。
自分が描いた漫画を読んで子どもたちがよろこんでくれる。
その様子を見て、自分がうれしくなる。
こうしてよろこばせごっこができることが本当に幸せだ。
あなたは何をして、よろこばせごっこをしていますか?
「人間が一番うれしいことはなんだろう?
長い間、ぼくは考えてきた。
そして結局、人が一番うれしいのは、
人をよろこばせることだということがわかりました。
実に単純なことです。
ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい」
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「やなせたかし 明日をひらく言葉」
PHP研究所 編
PHP文庫より
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