
直感を意思決定の方法として用いていた経営者の典型例がスティーブ・ジョブズでした。
彼は、「直感」について、次のような言葉を残しています。
「インドの田舎にいる人々は僕らのように知力で生きているのではなく、直感で生きている。
そして彼らの直感は、ダントツで世界一というほどに発達している。
直感はとってもパワフルなんだ。
僕は、知力よりもパワフルだと思う。
この認識は、僕の仕事に大きな影響を与えてきた」
いかにもスティーブ・ジョブズらしいと言うべきか、いささか誇張された指摘にも思えますが、実際にスティーブ・ジョブズの意思決定が、多くの場合、一瞬の直感に導かれて行われていたことは確かなようです。
例えば、ジョブズがアップルに復帰した直後に販売したiMacでは、発売直後に5色のカラーを追加していますが、この意思決定の際に、ジョブズは製造コストや在庫のシミュレーションを行うことなく、デザイナーからの提案を受けた「その場」で即断しています。
製造や物流にある程度関わった経験のある方であればおわかりだと思いますが、もともと1色しかなかった製品に5色を追加するというのは、ロジスティクス全体の管理の難易度を飛躍的に高めることになるので、慎重な分析とシミュレーションを経て行われるのが常識です。
しかし、ジョブズはそのような「論理的」で「理性的」なアプローチを踏むことなく、「直感的」で「感性的」な意思決定を行い、実際にiMacは、アップル復活を象徴する大ヒットとなりました。
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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
山口 周 著
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