
人間国宝の講談師・一龍斎貞水さんの言葉。
「教えてくれなきゃできないって言ってる人間には、教えたってできない」
というゴシック体の言葉のあとにこういう説明があります。
「“貞水さんはあまり後輩にものを教えませんね”って言われるけど、僕らは教えるんじゃなくて伝える役なんです。
伝えるということは、それを受け取ろう、自分の身に先人の技を刻み込もうとするから伝わっていくもの。
教えてくれなきゃできないって言ってる人間には、教えたってできませんよ」
貞水さんも若い頃、師匠に言われたといいます。
「おまえたちは、日頃いかにも弟子だという顔をして俺の身の回りの世話をしているくせに、俺が高座に上がっている時、それを聴こう、盗もうって気がちっともない。
ホッとして遊んでる。
俺が高座に上がっている時は、どんなに体がきつかろうと、お金を払って見に来てくださっているお客様のために命懸けでしゃべってるんだ。
その一番肝心な時に、聴いて自分から習おう、盗もうって気がないからうまくならないんだ」
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生き方のセオリー
藤尾 秀昭 著
致知出版社
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