稲盛和夫「才に使われるな」

banner02
稲盛和夫 いいため話
画像:Naverまとめ

よく「才に使われるな」と言います。

才能のある人はつい自分の才能を鼻にかけ、傲慢に振る舞ってしまいます。

それは、日本航空の例をみても明らかです。

以前の日本航空は、「親方日の丸」の組織体質のなか、官僚的な経営幹部が頭だけで会社を引っ張っていました。

幹部社員は皆、高い能力を持つ非常にエリート意識の高い人たちばかりです。

学歴も高く、礼儀正しく見えるけれども、実は慇懃無礼(いんぎんぶれい)で、努力の大切さや人間として正しい「考え方」など気にも留めません。

そんな才覚だけを備えた人間が大きな権力を握り、企業内を牛耳(ぎゅうじ)るようになり、組織全体が「人として大事なこと」をないがしろにしてしまった。

そのような組織がお客様を大切にするはずがありません。

そのために、日本航空は2兆3千億もの巨額の負債を抱えて経営破綻(はたん)しました。

才能を使うのは「心」だと言われるように、「考え方」が自分の能力を動かしていかなければなりません。

心を失い、能力だけがあるという人は、「才に溺(おぼ)れる」と言われるように、必ず失敗します。

人間として正しい、つまりプラスの「考え方」を持って「心を高める」ことに努めるのがたいへん大事なのです。

では、私の考えるプラスの「考え方」、マイナスの「考え方」とは、どのようなものなのでしょうか。

プラスの「考え方」とは、端的に言えば、正義、公正、公平、努力、謙虚、正直、博愛などの言葉で表現される、プリミティブな倫理観そのものであり、世界のどこでも通用する普遍的なものばかりです。

そして、その反対に、マイナスの「考え方」とは、プラスの「考え方」の対極にくるものであると私は考えています。

それらを対比させて列挙するならば、左に挙げるような項目として示すことができます。

■プラスの「考え方」

常に前向きで、肯定的、建設的である。

皆と一緒に仕事をしようと考える協調性を持っている。

真面目で、正直で、謙虚で、努力家である。

利己的ではなく、「足る」を知り、感謝の心を持っている。

善意に満ち、思いやりがあって優しい。

■マイナスの「考え方」

後ろ向きで、否定的、非協力的である。

暗く、悪意に満ちて、意地が悪く、他人を陥(おとしい)れようとする。

不真面目で、嘘つきで、傲慢で、怠(なま)け者。

利己的で強欲、不平不満ばかり。

自分の非を棚にあげて、人を恨み、人を妬(ねた)む。

自分の人生を素晴らしいものとしたいなら、幸運であれ、災難であれ、人生で直面するさまざまなことに対し、プラスの「考え方」に基づいて行動することです。

人生の鉄則はそれに尽きると言ってもよいと思います。

たった一回しかない人生を、生きがいに満ちた、素晴らしい人生だったと言えるものにしていこうと願うなら、自らの「考え方」を美しく、気高いものに磨き上げることに努めていかなければなりません。

つまり、全人格的に優れているという意味での「全(まった)き人」を目指す努力をしなければなりません。

私が理想とする「全き人」とは、善(よ)き思いに根ざし、人間として正しいことを貫く姿勢を持つ人であり、誰もが「ああ、あの人は素晴らしい人だ」とほれぼれするような人柄の人物です。

また、単に能力に長(た)けているだけではなく、自然と昔から「あの人と一緒に人生を歩みたい」「共に仕事をしたい」「あの人がいてよかった」と思われるような人物のことです。

大切なのは、「こうありたい」と思い続けることです。

「こういう自分でありたい」と思って一生懸命努力し続ければ、必ず人間は成長するものです。

もともと、生まれながらに立派な人格を持った人はいません。

人間は一生を生きていくなかで、自らの意志と努力で高邁な「考え方」を持った人格を身につけていきます。

『考え方』大和書房