
日本列島を正確に測量した最初の人は、伊能忠敬であった。
49歳のとき、家業の酒造業を息子に譲り、50歳から天文学、暦学の勉強を始める。
55歳から71歳まで17年間、日本列島を歩き続け、
「大日本沿海実測全図」(通称「伊能図」)を完成した。
ぜん息の持病に苦しみながら、72歳で亡くなるまで自分の夢を追い続けたのである。
忠敬が踏破した距離は4万3千キロ。
地球を一周と10分の1を歩く距離であるから驚く。
ところで、もし忠敬に、
大事業の決意のほどを尋ねたら、なんと答えただろうか。
「初めの一歩を踏み出すのに決意などいらない」と
答えたに違いないと思う。
私たちが大きな仕事を前にして、なぜ勇気を失うのかを考えてみたらわかる。
まず、大きな仕事だ、大変だという思いで、やる前から萎縮している。
そして、
できるだけ無理しないで、最短距離で目的地に到着したい、
失敗して笑われたくない…
これらの、要領よくやりたい、
という雑念にとらわれてしまう。
一方、忠敬は、こんな小さな心に
かかずらわっていなかったに違いない。
たとえそんな心があっても、それはそのままにして、
まず1歩を踏み出して、2歩目はそのときに考えればいいと、
我が道に飛び込んでいったのである。
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出典
[人生、「不器用」に生きるのがいい]
藤原 東演 著
祥伝社より
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